発酵について少し勉強してみようと思い手に取りました(今となってはなぜこの本を選んだか忘れましたが)。
小倉ヒラクという人が著者。自称「発酵デザイナー」。

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発酵について学ぶ点が多かったこともさることながら、一番印象的なのは最終章。

 

1.「冷たい社会」と「熱い社会」

テーマは「バイオテクノロジーとヒトの未来」。 発酵はバイオテクノロジーなんですね。
最新のバイオテクノロジーと言えば遺伝子組換えやゲノム編集。 発酵と文化人類学を掛け合わせると「バイオテクノロジーとヒトの未来」にたどり着いたようです。
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フランスの文化人類学者の著書を引用し、本書には以下の2つの社会が記されています。
ざっくりまとめますと、
    ・「冷たい社会」=現在の地球の循環を維持して持続可能を目指す「循環型社会」
    ・「熱い社会」=世界の限界を、技術革新で突破しようとする「進化型社会」

2つの社会についての現状が、きわめて中立的、客観的に書かれています。
自分であればついつい循環型社会に肩入れした文章になってしまいそうですけれども。 その上で筆者の立場はというと、「常にこの2つの間で揺れ動いている」と。

例えば、生命を自由に操れる遺伝子操作と、1000年以上かけて麹菌屋(もやし屋)さんが麹菌を手なづけてきた品種改良を、対極ではなく相対的なものとして捉えています。
なぜならいずれも、自然を「崇拝する神」であると同時に「人間に都合のいい利益を引き出す収奪の対象」と考えていることに違いはないから。

違いは人間側のスタンスで、「ヒトが自然に寄り添う」のか、「自然をヒトに寄り添わせる」のかの違いにすぎない、と。

2.未来はどうすればいいのか?

「自然を意のままにデザインできる技術を手に入れた僕たち」が、じゃあ今後どうすればいいのか、の問いについては、

バイオテクノロジーを使って何をどうするかを決める(=「意味を与える」)のは「僕でありアナタだ」と。
「伝統回帰でもない破壊的進化でもない第三の道はヒトの『感性』にかかっている」と結論づけています。
「諸刃の剣」であるテクノロジーは「僕やアナタ」の適切な倫理観でもっていい方の刃だけを使って活用していこう、と言ってるんですね、きっと。

考えとしては理解できるのですが、そもそもそんなうまいこといい方の刃だけを使うことできんのかとか、一般市民が暴走した場合の研究を止める方法がなんかあるんかとか、いろいろ不安にはなりますね。
まあ粛々と、やれることをやるしかないんですけれども。

また、先日もNHKの番組で、米国の研究チームが半合成生物(何のこっちゃ)で自然界に存在しないタンパク質生成に成功したとか、中国で遺伝子操作ベビーが誕生したとかやっていましたが、正直まったくついていけなくて、どれだけ冷静に考えてみたとしても「この先どうなるんだろう」という不安しかないですね。。。

発酵を学ぶために始めた勉強の終着点が、えらいところにたどり着きました、というお話。

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